貴景勝関はいつもの塩インタビューになりやしないかとこっそり冷や冷やしていましたが、何はともあれ若手が出てくる事は良い事です。
ここ数年兆候が出ていた過渡期へとついに突入した1年となりました。果たしてここから抜けだし、次の時代の覇者となるのはどの力士でしょうか。
場所前の大穴狙い幕内最高優勝予想に選出した隆の勝は大負けに終わりましたが、優勝パレードの旗手を務めるという斜め上の結果に。
ある意味ニアピン賞!
地味力士マニアとしては、碧山にも三賞を欲しかったですね。
今場所2桁の白星を挙げた力士にしか負けていないのですよね。それこそ地味な記録すぎて気付いてもらえなかったのかも?
地味力士といえば、錦木はもう地味枠を卒業したといっても過言ではないでしょう。
場所前こそ大翔丸の次くらいに声援が小さい力士でした。
先場所は西前頭12枚目での10勝。今場所は明らかに番付運に恵まれての上位挑戦であり、大負けは確実かと思われました。本人も「みんな3勝12敗くらいだと思っていたでしょ?」と茶目っ気たっぷりに答えています。
それが歴戦の強者達を相手に一歩も譲らず、怪力を見せつけて会場を沸かせ、気が付けば勝ち越していました。
上位初挑戦で勝ち越しは想像以上に難しいらしく、後の横綱大関達もそのほとんどが一度は跳ね返されています。裏を返せば、そこで勝ち越した力士は後の名力士が多く、錦木にも期待が寄せられます。
過半数には達しませんでしたが、技能賞の候補にも挙がっていたそうです。
ただ勝つだけでなく、これだけ面白い相撲を取っていたのですから、場所後半になるにつれてどんどん声援も大きくなっていきました。
花道奥まで眼鏡を掛けてくる見た目のインパクト、突き押し全盛のこの時代に珍しい四つ相撲の力士、軽快なトーク力。今となって思えば、なぜこれまで人気が出なかったのか不思議なくらいです。
同じく地味力士の系譜だった大栄翔も今場所は魅せてくれました。終わってみれば9勝6敗でしたが、途中まで碧山と共に優勝争いに付いていき、これまでにない声援を浴びる事ができました。
土俵の充実という言葉はよく使われますが、まさにこれの事でしょう。
力士に人気が出てくる瞬間は結局のところ取り組みの結果なのです。それもただ勝ち負けだけでなく、会場を沸かせる相撲を取ること。
力士は相撲スタイルによってキャラクター付けされると言い換えても良いでしょう。
思い返せば、今では幕内の人気上位に入る嘉風だって、かつては地味力士の代表格でした。豪風との違いが分からないというのが相撲ファンの間で定番のネタになっていたくらいです。
それがある時を境に突然スピードのある相撲を取るようになり、上位を脅かす存在へと変貌しました。5年前の嘉風を見て、今の嘉風の立ち位置を誰が想像できたでしょうか?
一方の豪風も味のある大ベテランとしてすっかり人気力士の仲間入りです。ただ、もう幕下へ後がありません。何とかもう一花を期待したいところです。
ところでこのブログで散々失礼な事を書いてきた大翔丸関はというと、やっぱり今場所も土俵入りでの声援が一番小さい力士でした。
勝っても負けてもこの人は一瞬の相撲なんですよね。もしかしたら、今の幕内力士の中で平均取り組み時間が最短なのではないでしょうか。それだけに記憶に残るまでもなく、次の一番へと移ってしまうのかも知れません。
大翔丸が地味でなくなったら、それはそれで寂しい気もしちゃったり。