今年の大相撲も全ての本場所が終了しました。1年前のことを思えば、まさに一寸先は闇といった1年だったと思います。
例えば照ノ富士。ようやく戦国時代が終わり、1人横綱の照ノ富士が引っ張っていく時代が始まると思いきや、この1年はたった1回しか優勝できず。長期離脱となって岐路に立たされることになりました。
例えば御嶽海。1年前はまだ昇進もしていませんでした。それが同じ年に昇進と陥落を経験するとは。
今後の大相撲はどこへ向かっていくのか。1年後に予想外の力士が時代を築きつつあっても驚きませんし、戦国時代が続いていても驚きません。新鋭の若手もうかうかしていれば、さらに若い世代がやって来ます。どんな時も突き抜ける時は一瞬です。
大関強制昇進があり得る状況に
心配事として。大関は必ず東西に1人必要です。(大関も番付なので、関脇小結に空きを作らないのと同じ理由です。)横綱は厳密には番付ではなく殿堂入りした大関という扱いなので、鶴竜のように横綱大関として兼務することができますが、横綱と大関の合計数は2名が最少。つまり、この状況で欠員が出れば、誰かしら規定を満たしていない力士が強制的に大関へと上がることになります。
半世紀以上昔、大相撲が現在の形になって以降、起きていない異常事態です。ところが来場所は1横綱1大関にまで数が減ります。正代が復帰できれば良いのですが、ここ最近の成績からすれば厳しいと言わざるを得ません。
もうこれ以上減らすことのできない状況ですが、照ノ富士は今後を危ぶまれています。こちらは回避するために無理にでも現役を続けさせるという奥の手がありますが、貴景勝はそうもいきません。普段は強いのですが、故障癖があるだけにふらっと落ちてしまうような危険も含んでいます。
無いとも言い切れない状況だけに、実際どのような運用がなされるのか気になるところです。1人だけ昇進させるのでは負担も大きいですし、何より再び同じことが起きかねないので一気に複数名昇進させる形になるでしょうか。現在でいえば、連続で三役に在位している若隆景、豊昇龍、霧馬山あたりが候補になります。
異論が出てしまうのは間違いないだけに、早期に新大関の誕生が待たれます。
短命大関
御嶽海はこのまま復帰できなければ記録を比較できる年6場所制になって以降、史上ワースト1位の短命大関となります。正代も粘った印象でしたが、10位の短命です。近年の力士では、栃ノ心と朝乃山も3位にランクインしており、短命大関が続いています。いずれも上がった途端の怪我や不祥事による突発的な陥落なだけに悔やまれるところです。
大関に対する誤解
近年の大関陣の不成績を見て昇進基準を厳しくしろとの意見が散見されますが、これは全くの見当違いですね。昇進前の成績を振り返ってみれば
琴奨菊33、稀勢の里32、豪栄道32、照ノ富士33、高安34、栃ノ心37、貴景勝34、朝乃山32、正代32、照ノ富士36、御嶽海33
と大した相関性はありません。もっと昔でいけば、32勝で上がった千代大海では歴代でもトップクラスの成績を残し、34勝で上がった雅山は1度も2桁勝利をすることなく陥落しています。
何よりも、これ以上昇進基準を上げてしまうと大関が不足し、前述の強制昇進で結局33勝にすら遠く及ばない力士が大関になってしまうという逆転現象が発生するのは明らかです。
またしても優勝に手が届かなかった高安。取組後の涙には胸を打つものがありました。兄弟子の稀勢の里も似たような立ち位置で、初優勝までに12回もの準優勝を記録していました。高安はこれが7度目の準優勝。最後には優勝することができた兄弟子に続くことはできるでしょうか。総当たりでの好成績で大関への再挑戦も始まっています。
新弟子旭大星
十両の番人は1度幕下へ落ちると戻れない。この傾向は間違いなくあります。旭大星は一気に最下層の序ノ口にまで落ちてしまいました。
しかし、普通であれば引退となるところを旭大星は再起の道を選びました。もう失うものはありません。開き直って、33歳のオールドルーキーのつもりでこれからの活躍を見ていきましょう。初土俵の今場所は、優勝まであと一歩の6勝1敗でした。
場所前に注目していた力士たち
栃ノ心 西前頭8枚目 6勝9敗
来場所には元大関の現役力士が5名という珍事になります。その中でも栃ノ心は元大関として扱われていないような節があります。確かに最強力士であった瞬間は存在しただけに、寂しいものです。目立った成績ではありませんが、時折思い出したかのように豪快な相撲を見せるときがあります。あともう一花。それを期待したいですね。
炎鵬 東十両11枚目 10勝5敗
勝ち越すことはできました。丸2年できていない入幕へ向けて、連続して結果を残したいところです。
徳勝龍 東十両12枚目 4勝11敗
10連敗でフィニッシュ。幕下転落は確実といえる状況です。来場所以降、どうするのか。数日中に決断があるかも知れません。2つ上の玉鷲はまだ幕内上位で頑張っています。とはいえ、全員ができる訳ではないのが大相撲。本人の決断が全てでしょう。
湘南乃海 西幕下筆頭 5勝2敗
ついに悲願が叶いました。勝ち越し後の連敗で嫌なムードも流れ始めましたが、もう1つ勝星を積み上げ、自力で十両を手繰り寄せました。随分と苦労したようにも思えますが、まだ24歳。これからの力士です。
令和5年初場所番付予想
幕内上位編
幕内上位があまりにも詰まり、どうしようもない状況です。膨れ上がった三役陣を解体しようにも、無理な編成にしかならないので、すぐにはしない。というよりも、できなさそうです。平幕編成の困難さを軽減するために琴ノ若を無理やり上げてみました。これまで散々番付運の無さで割を食ってきた力士ですしね。
その後も大渋滞していますが、9勝で1枚しか上がらないことはたまに見かけるのでこの位置に。御嶽海と玉鷲を5枚目まで下げるパターンも考えましたが、最近の傾向からしてここまで下がらなさそうです。また、なんだかんだで8勝の据え置きも避けると思います。(それでも錦木が据え置きになってしまいますが)高安は関脇へ上げるべきだとは思いますが、三役の勝ち越し者を追い越さないように組まれる場合が多いので、小結と予想します。3人ずつのほうがバランス良いですしね。
若隆景 関脇 豊昇龍
正代 関脇
高安 小結 霧馬山
小結 琴ノ若
明生 前1 若元春
翔猿 前2 大栄翔
翠富士 前3 御嶽海
佐田の海 前4 錦富士
玉鷲 前5 竜電
幕内ー十両入れ替え編
こちらも難解です。確実に空くのは3枠。剣翔は確定として、昇進候補が天空海、水戸龍、千代丸と3人います。宝富士も落として全員上げるほうが公平そうですが、ここ最近の傾向からして無理に入れ替えることは無いと思います。また、来場所17枚目ができれば宝富士は単純に残れる星となります。
単純計算で1番上になる天空海を上げ、西筆頭8勝がスライドで終わることも多いために水戸龍優先と予想しましたが、ここは誰が上がってもおかしくありません。宝富士、天空会、水戸龍、千代丸の4力士で争う2枠となります。
↑ 剣翔、天空海、水戸龍
↓ 照強、熱海富士+千代大龍
十両ー幕下入れ替え編
唯一ここは波乱なく決まりそうです。千秋楽は分かりやすい入れ替え戦でした。
↑ 湘南乃海、朝乃山
↓ 徳勝龍+千代大龍
※追記:豊山も電撃引退。他に目立った昇進候補もいないので、棚ぼた昇進は白鷹山で確定といって良さそうです。