野球においてキャッチャーは特殊な立ち位置にあります。
まず9つのポジションの中、唯一向いている方向が違っています。防具を着けて姿格好も違っています。
草野球であれば球を受けきれるキャッチャーが居なければどんなに良いピッチャーでも宝の持ち腐れですし、重要度はプロ野球であっても変わりません。
だからこそ、司令塔・女房役といった異名があるのでしょう。
ところで強豪チームには第二捕手が不可欠であるという格言があります。
特に体力を使う捕手は怪我をしやすいポジションですし、その特殊性故に替えが効きにくいために、絶対的なレギュラーがいても保険となる捕手が必ず必要になるという意味でしょう。
真っ先に思い浮かぶのはヤクルトスワローズ古田に対する第二捕手だった野口ですね。
野口は後に阪神が優勝した時にも矢野のカバーに回り、金本や片岡アリアスといった大物を差し置いて一番の補強であったと星野監督に言わしめました。
まさに名脇役と言うべき存在でした。
ところが一軍メンバーをよく見ると、捕手は3人登録されている事が多いのです。
さすがに保険の保険ともなると名脇役とは呼ばれにくいです。
レギュラーが固まっていないチームであれば別として、第一捕手・第二捕手が固定のチームにおける第三捕手は非常に影の薄い存在です。年間の出場数が10試合程度という事もざらにあります。
と言うよりかは、1人の第三捕手として存在している事が少ないとの表現がより正確でしょうか。
第三捕手にありがちなパターンは
・経験の少ない若手のお試し枠
・半ばコーチのロートル捕手
・代打の切り札が緊急時には捕手もできる
この3つでしょう。
これらの選手が入れ替わり立ち替わり第三捕手を務める事が多いようです。
いずれにせよ、第三捕手がマスクを被る姿は滅多にお目にかかる事ができません。
彼らはプロ野球選手、しかも一軍に存在する選手でありながら、華やかさには遠い存在。スポットライトの境目に位置している選手達です。
だからこそたまーーーーーに活躍した時の盛り上がりは格別です。
「意外性」という言葉だけでは片付けられない、サプライズの一種。ある時には後のスター選手の予兆であり、ある時には蝋燭が燃え尽きる前の一瞬の輝き。
その時には分からない、後から見て初めてその意味に気が付く活躍。
ここに第三捕手に注目する楽しみがあるのです。
西武犬伏でしょうか、それとも阪神岡崎でしょうか。
そんな渋い選手達は記録に残らずとも記憶に残るのです。
居なくてもほとんどの場合は多分大丈夫。だけれど居なきゃ居ないでなんだか不安。出場している場面を見られれば、ちょっぴりラッキー。
ここにもまた、B級の魅力があるのでしょう。